Research

研究テーマ

2.分析機能を集積したマイクロチップの開発

超小型液体クロマトグラフィーシステム

高速液体クロマトグラフィーは汎用性と信頼性のある分離分析技術であるため,多くの科学的研究と産業において重要な役割を果たしています。近年,高効率で超高速な分離がトレンドとなっていますが,従来から軽量かつコンパクトでポータブルなHPLC装置への潜在的なニーズがありました。それは,装置がポータブルになることでその場ですぐに分析結果を得たり,分析成分の性質が変わる前に分析を完了したりすることが可能になるからです。例えば,環境分析,患者のそばでの検査などの用途です。従来のHPLC装置は大型で大重量であるため,使用する場所が実験室内の特定の場所に限定されているため,そのような需要にこたえることは困難でした。小型化されたHPLC装置では,必要なサンプル量,溶媒・エネルギー低消費,廃液量が大幅に減少し,従来の装置と同じスペースに複数の装置を設置することで同時に複数の分析が可能になります。

 

我々のグループは,AC電源だけでなく,電池でも駆動する非常に軽量・コンパクトな高速液体クロマトグラフィー(HPLC )装置の実現のため,実用的な性能を保持しつつ装置の構成要素を小型化する研究を行っています。下の写真はそのHPLC装置の試作機です。

 

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ポンプ,試料注入器,カラム,検出器がB5サイズに収納されており,質量は約2 kgとなっています。マイクロ流体デバイスは4×6 cmほどの大きさの基板に分離カラムと検出器(微小電極)が搭載されたものとなっています。分離カラムは0.8 mm径で30 mmの長さの円筒の中に3 µmの粒子が充填されています。

 

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ポンプは電気浸透(EO)を原理としています。電気浸透は水を満たしたガラスの毛細管の両端に直流電圧を印加すると,負極側に水が移動する現象です。従来の機械式ポンプとは異なり,本ポンプには流量の変動が非常に小さい(脈流がない)という特長があります。本ポンプでは毛細管の代わりに直径4 mm, 高さ4 mmのシリカ多孔体を用い,ここで発生する水の電気浸透流が実際に用いる溶媒を押し出す仕組みになっています。流量は印加する電圧の大きさで調節します。

 

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本研究は,独立行政法人科学技術振興機構による,平成20年度シーズ発掘試験(発掘型)採択課題「ポンプを搭載したハンドヘルド液体クロマトグラフィーシステムの開発」および研究成果最適展開支援事業(A-STEP)フィージビリティースタディ可能性発掘タイプ・シーズ顕在化 平成21年度採択課題「オンサイト分析を実現するスマートモバイル液体クロマトグラフィーシステムの開発」の成果です。

 

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